生れ落ちた日 |
その日、AAは朝から慌しかった。 「良い?皆。今日が何の日か・・・・・解ってるわね??」 「「「「了解してます!ラミアス艦長!!!!」」」」」 微笑を浮かべて、ラミアス艦長がクルー達に問いかける。 すると、皆笑顔で返事をした。 その様子に唖然とする、つい先日合流したオーブの面々。 AAに来て、数日・・・・驚きの連続だった彼ら。 戦闘艦なのに温泉はあるわ、得体の知れない丸い物体があちこちに生息してるわ、食堂のメニューもすごい。自国では考えられない・・・というか、どこでだってこんな戦闘艦ありえないだろう。 それに、瀕死の敵・・・というか・・・連合の、しかもエクステンデッドを治療できるなんて・・・・技術面でもプラントや連合より遥かに発達しているAA。 この前も一人拾ってきた。青い髪の少年で、連れてきたとき瀕死の状態だった。今もまだ目覚めないまま。それでも、一命は取り留めた。 でも、厄介なことに違いはないのに・・・・この艦は、それをごく当たり前に受け入れるのだ。 拾う方も拾う方だが・・・・それを見て笑顔で言った、艦長の一言が。 「あら、また何か拾ったの?キラ君らしいわね。」 我らが姫に関しては・・・ 「またか!お前は!!全く・・・・ちゃんと面倒見れるのか?」 と、まるで犬猫でも拾ってきた息子に対する母親のようで。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・カガリ様、それ・・・・人ですよ・・・・? そう、突っ込む人が居ても・・・・仕方のないこと。 もう、何もかもすごいです。AAは。 ・・・っていうか・・・・・・・寧ろ、存在そのものが反則な気がする・・・・。 オーブの軍人達は、そんな風に思ったのだった。 そんな、彼らだ。今の状況が呑み込めている訳が無い。 大分慣れたとはいえ、まだまだAAの思考にはついていけないらしい。 疑問に思い、艦長であるラミアスに尋ねる。 「・・・あの・・・・何かあるんですか・・・・・?」 「え?ああ・・・・AAは初めてですものね。今日はね、AAにとって・・・いえ・・・・私達にとって、特別な日なの。」 「・・・特別・・・・ですか?」 「ええ。貴方方にとっても・・・特別な日よ?」 そう、微笑を向けられて顔が赤くなるのを感じる自分に慌てながらも、彼は思い出す。 ・・・・今日が何の日かを。 そして、ハッとして艦長の顔を見た。 今日は・・・・・。 「カガリ様の誕生日ですね?」 「そう。でも・・・・それだけじゃないのよ?」 いたずらっ子のような笑みで返すマリュー。 そして、言う。 「今日はね・・・・。」 *** 「マードックさん・・・それに皆さん、どうしたんですか?何かありました??」 「おぉ、坊主!丁度良い・・・・姫さんと一緒に此処まで来てくれ。良いか?必ず、二人で来いよ! さてとっと・・・・蜜柑と海草はのっぽの兄ちゃんが連れて行ったし・・・あとは坊主の兄貴だけか・・・。」 この前の戦闘で拾った、まだ目覚めない連合のエクステンデッドの治療を終えて、ブリッジに行こうとしたときだった。 後ろから、AAのクルー達が追いかけて来たのだ。 そして、マードック達はそう言って地図をキラに手渡すと、慌しく去って行った。 あとに取り残されたキラは、わけが解らない。 ・・・・・・・・・・・・・一体何なんだ?? とりあえず、マードックに言われた通りカガリを呼びに行く途中、手元にある地図に目をやる。 どうやら、この赤丸印の所へ行け・と言うことらしい。 本当、一体どうしたのか・と疑問に思いながら、カガリの部屋のチャイムを鳴らした。 *** 「・・・・一体何なんだ?キラ。」 「さあ・・・・?僕にもよく解らないんだよね。」 二人はAAのクルー達に言われた通り、地図に印がしてある場所へと向かった。 そこは、大きな家があった。 豪邸だ。 だが、人が住んでいる気配はない。 よく解らないが、とりあえず入ってみよう・と地図に書かれたとおり、中庭の方へと足を運ぶ。 そして、中庭へと続く薔薇で出来たトンネル?を抜けた時。 突然、パーン!という音と紙ふぶきとともに声が振ってきた。 「「「「キラ君、カガリさん・・・HAPPY BRITHDAY!!!!」」」」 突然の祝いの言葉。 それに、今日が何の日か知る。 「さあ、二人とも。こっちにいらっしゃい。皆、待ってるわ。」 「桃色歌姫も通信越しだけどいるから!あ、これ僕からのプレゼント!!金髪獅子姫のも用意してやったんだからね!」 「クロト・・・キラに抱きつくな。動けないだろ?これは俺から、二人に。対になってるんだ、その懐中時計。」 「・・・・キラにカガリ・・・おめでと・・・・。」 「キラも、カガリさんもおめでとうございます。私は通信越しですが・・・・今日は、楽しんでくださいね。」 「やあ!少年に獅子のお姫様!!僕からの贈り物は特製コーヒー1年分と、ケバブのヨーグルトソース1年分だ!美味しく召し上がってくれ!!」 「キラ、これを・・・・。19歳、おめでとう。」 そう言って、皆が一斉に喋りだす。 もう、何が何だかわからなくなる。 そんな状況に・・・・・カガリが遂にキレた。 「お前らーっ!!!!一人ずつ話せーーーーっ!!!!!!!」 暴れだし、銃を乱射するカガリ。 慌ててキラが止める。 「カ・・・カガリ・・・・落ち着いて・・・っ。」 「落ち着いてられるかぁっ!!!!」 そして、その場は戦場と化したのだった。 「まったく・・・・。」 キラは辺りの悲惨な状況を、呆れた目で見る。 カガリの暴走で、めちゃめちゃだ。 でも・・・・嬉しかった。 皆が祝ってくれたのが。 こんな自分なのに。 存在しちゃいけない存在なのに。 受け入れてくれる皆に・・・・・どれほど救われているか。 頬が緩むのを止められず、キラはこれからどうしようかと思う。 マリューさんから、今日は自由にしてていいと言われたのだ。 さて・・・・どうしようか? 海岸へ行く。 AAのブリッジへ行く。 自室へ帰って、もう寝よう。 |