なんとなくだった。 なんとなく・・・・そこに行きたかった。 だから、すごく驚いたんだ。 君が・・・・そこに居たことが。 灯火は闇の中、道を照らす。 AAの皆がやってくれた誕生パーティも終わり、一人海辺へと足を運ぶキラ。 なんとなくだった。 急に、海が見たくなって。 浜辺へと向かうと、そこには双子の姉の姿が。 岩場に座り、夜風にその美しい光の髪を靡かせて。 彼女は、この世のものとは思えない美しさで、そこに存在していた。 「・・・・・カガリ。」 「・・・キラか。どうしたんだ?こんなとこで。」 声をかけると、儚げに微笑むカガリ。 いつもとは違う雰囲気に、キラは驚く。 てっきり、「どうしたんだ!!?こんな所で!ああ、もう!!そんな薄着じゃ風邪引くだろ!!!?」と言われるかと思ったのに・・・。 キラから視線を外したカガリが、闇に染まりながら・・・光に輝く海と空に目をやる。 「・・・・・綺麗だな。」 ふと、呟かれた言葉。 キラは、カガリの方を見る。 いつもなら、キラの視線に気付く彼女。 なのに、今は気付かない。 キラは、急に不安になってカガリの名前を呼ぶ。 「カガリ・・・・?」 キラの声に気付いたのか・・・カガリは一度振り返るが、また視線は目の前に広がる闇に向けられる。 「どんなことも、どんなものも・・・・存在しているというだけで・・・・こんなにも綺麗なのにな。何で・・・それに気付かないんだろう・・・・人は。」 そう言った、彼女の言葉に。 どうしょうもなく・・・・涙が出そうになる 自分の事を、肯定してくれた気がして。 自分だって、存在してていいんだって・・・そう、言ってくれている気がして。 ありがとう、皆。 ありがとう・・・・姉さん。 気付かれないように、そっと涙を拭った。 どの位、そうしていたのだろう。 カガリの横顔を照らしていた、冷たい月明かりはいつの間にか消え、代わりに朝日が彼女を照らし出す。 やはり、カガリには月明かりよりも太陽が良く似合う。 明るく、真っ直ぐで。 闇に囚われそうになっても・・・彼女が居るから。 だから、自分が平気なのだ。 朝日の中・・・・遠くを眺めるカガリは、何よりも美しかった。 思わず見惚れていると、彼女は前を向いて、嬉しそうに言う。 「・・・・・今日は楽しかったな、キラ。」 「・・・うん。」 その問いに、僕は相槌しか打てない。 彼女が、余りにも綺麗過ぎて。 「皆・・・・本当・・・・優しいよな。」 「・・・そう・・・だね。」 優しいのは、カガリもだよ。 「私は、AAの皆が大好きだよ!毎日毎日、一日一日ごとに・・・どんどん大好きになる。」 「僕も、皆が大好きだよ・・・。」 そう、皆大好きだ。 かけがえの無い大切な人達。 でも―。 「でも・・・・。」 「?」 そこで言葉を切るカガリ。 今まで前を向いていた、その瞳が・・・・キラに向けられる。 琥珀色のカガリの瞳に、自分が映る。 捕らえられて・・・視線が外せない。否、外したくない。 そして、笑顔で言われるのだ。 この世の何よりも・・・・欲しい言葉を。 「でも・・・キラが一番好きだ。」 ・・・・・・・・・・・それが、僕にとっての今日一番の贈り物。 だから、僕も笑顔で返すんだ。 僕の持つ。一番の贈り物を。 「僕もだよ・・・・カガリ。」 |