4、花嫁強奪 |
「アークエンジェル、発進!!」 そう言って、この船に乗るのはどれ位久しぶりだろう。 そして、この船で再びあの星の大海に行く事。 不安が無いといえば、嘘になる。 また、多くの人を傷つけるかもしれない。 自分と言う、化け物の存在で。 でも―。 自分は、こんな男と結婚しなきゃいけないのか・・・。 カガリは花嫁衣裳を身に纏いながら、そう思った。 結婚するなら、キラが良かった。 双子の弟だと言われたときは、この淡い恋心も終わるのか・と泣いたのもだ。 その事実を知って尚、諦める事なんかできず傍にいる。 それに、あの変態からキラを守らなければならなかったし。 だがこの際、百歩譲ってあの変態ヘタレヅラでもかまわない。 こんな奴以外なら、誰だって素敵に思える。 キラ・・・。 「・・・・・・とか思ってたのに・・・・・何なんだよ!!?これは!!!!」 確かに、嬉しい。 密かに好いている相手が、結婚式の最中に自分を攫ってくれたのだ。 嫌でも期待する・・・・が。 「何もフリーダムで来ること無いだろう!!?」 全く、時々この弟は突拍子も無いことをする。 こんな伝説的なMSで来たら注目の的だろう。 あれだけ目立つのを嫌っていたのに・・・・これでは元も子もない。 本当、何考えてんだ・・・・? それにどうせ攫いに来るなら、生身で来て欲しかった。 「カガリ・・・・もう、大丈夫だよ。」 「キラ・・・・ッ!!!!」 「・・・綺麗だね。このまま、駆け落ちでもしちゃおうか。」 ・・・・・なーんて・・・・・・・・・・・・・って!! これじゃあ、あの変態ヅラと同じじゃないか・・・ハァ。 カガリが一人葛藤していると、突然フリーダムのハッチが開く。 そこには最愛の弟の姿が。 「カガリ、少し我慢してね。」 「え・・・?うわぁ!!!?」 最愛の弟は、コクピットの中にカガリを招き入れる。 至近距離で迫られた、重度のキラバカである姉は顔を真っ赤に染めた。 そんな彼女の様子に気付くことなく、その体を抱きとめて、キラが真っ先に言ったことは・・・・ 「うわぁ〜、凄いね。このドレス。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「お前なぁ!!!!もっと他に言うことないのかよっ!!!!??」 思わず突っ込むカガリ。 ああ、さっきまでの妄想が走馬灯のように駆け巡る。 ・・・・今、認めたくは無いが少しだけ。そう、少しだけ・・・・アスランの気持ちが解ってしまった。 こんな風に感じる自分は、最早末期なのだろうか。 でも、キラを見て平常で居られる奴がいたら見てみたい。 だって、そんなこと、きっと誰にも無理だろうから。 こうして、カガリはAAへ行くことになった。 途中戦闘はあったものの、アスランとの時とは違い、怪我一つすることなく。 その上、あの笑顔で「カガリ・・・・これからは、僕がついてるからね。」と言われた日には・・・・っ!!!! この一件で、彼女がますますブラコンになったのは言うまでも無いだろう。 「僕は、はっきり言って・・・・議長のことは信じられない。」 キラは、そう言った。 と、言うのも今画面に映っているものが原因だろう。 映像の中、無邪気に笑うピンク色の髪の少女。 それは、キラの大切なラクスそっくりの偽者だった。 キラは不愉快そうに画面を睨む。 プラントのマザーに侵入して、色々なことが解った。 ラクスの偽者―ミーア・キャンベルのこと。 極秘裏に造られた5機のMSや・・・・彼女に似た、双子の姉妹。 アスハを憎んでいるというエースパイロット。 フェイスとして、ザフトに舞い戻った幼馴染のこと。 そして・・・・あの人そっくりの、「彼」の存在。 なんだってこう、嫌味な位揃ってるかなぁ。 恐らく、これでは自分がどんな生き物かも解っている事だろう。 遺伝子学の権威らしいし。 どうせ、「君に協力して欲しいんだ。平和のために。」とか言うつもりなんだろう。ああ、面倒くさい。 だが、そんなこと言われても・・・・もう、遅い。 あいつは、手を出しちゃいけないものに手を出したのだ。 そこで、冷めた笑いを浮かべ・・・・キラは言った。 「太陽に近づきすぎた英雄は、地に落とされる。その翼をもがれ、蝋で固められて・・・・ね?」 その小さな呟きと絶対零度の微笑みに、AA内の全クルーが怯えたのは当然の結果だった。 |
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