4、想いの行方。 |
「この戦闘、出来ることなら・・・・・私は止めたい。 いや・・・・止めなくてはいけないんだ!」 そう言った片割れの姉は、何よりも気高く美しかった。 オーブが、連合と共にザフトの最新鋭艦ミネルバを迎え撃つつもりだ・と。 オーブにいるサイから、連絡が入ったのは、ついさっきのこと。 2年前、共に戦った心優しき友人は、2年前の大戦後・・・・オーブのモルゲンレーテに就職。 その後、オーブ軍へと志願した。 理由は、と尋ねたら 「・・・・俺も、守りたいから。・・・この世界が、大好きだから・・・・・だから・・・・・かな。」 ―っていっても、大したことは出来ないけど。 苦笑して、そう言って・・・・。 今は、オーブでMSの開発・整備を手伝っているらしい。 その為、戦闘の有無も簡単に解るのだ。 そのサイからの、緊急連絡。 間違いでないことは確かだろう。 ・・・・・何か、の間違いであって欲しいけれど。 「オーブが・・・・・そんな・・・・・・・・・。」 カガリはそのことを聞いて、にわか信じられないように呟く。 誰だって信じられない。 信じたくない。 でも、それは現実なのだ。 カガリは唇をかむ。 自分の不甲斐無さにやりきれなくなる。 こんなことになるだなんて・・・・・思いもしなかった。 自分の国を守るので、必死だった。 でも―。 「・・・・・キラ、頼みが・・・・・・ある。」 でも・・・・それが、他の誰かの命を奪うことになろうとしている。 カガリはこの先どうしたらいいかなんて、わからない。 元々、こういう考えることは苦手だ。 いっつも自分は感情で突っ走ってしまう。 今も。 キラに、また辛い思いをさせると解っていても。 それでもこの選択をする自分を、神様は許してくれるだろうか? 「何?カガリ。」 キラが聞く。 私の残酷な『御願い』を。 「・・・・私は、取り返しの付かない過ちを犯した。謝る事さえ許されないような、事を・・・・私は・・・・・っ」 AAの皆は、静かに私の言葉を待っている。 言うんだ。 言え、私。 震える拳を握り締めて。 涙が溢れそうになるのを、堪えながら。 前を見ろ。 俯くな。 「・・・・間に・・・合わないかもしれない。 でも・・・・それでも・・・この戦闘、出来ることなら・・・・私は止めたい。いや・・・・止めなくてはいけないんだ! だから・・・キラ。お前が傷つくのを・・・・辛い思いをするのを承知で・・・・私はお前に頼みたい。勝手な願いとは解ってる・・・・それでもっ!!!!」 私の願いと共に・・・・戦って欲しい。 沈黙が降りる数秒間。 その中で、キラは苦笑しながら・・・・・ 「・・・・何言ってるの?カガリ・・・・・それは、確認されなきゃ駄目なこと??」 さあ、行こう―? そう言われて、堪えていた涙が溢れてしまった。 それでも、私は笑いながら・・・・キラに言う 「・・・ありがとう・・・・キラ・・・。」 この先、自分達が何処に行くのか・・・解らない。 どうすればいいかなんて。 正しい道がどれかなんて。 解らない。 解れない。 でも。 キラや、ラクスやAAの皆がいれば・・・・自分は何処までも行けるのだ・と。 それだけは解る。 だから。 だから―。 「フリーダムが?」 ミネルバへと乗艦したアスランに、とんでもないニュースが飛び込んできた。 カガリの結婚にも驚いたが・・・・・・フリーダムが彼女を連れ去ったというのには・・・・さらに驚いた。 心優しいキラのことだ。自分の双子の姉の意にそぐわない結婚に、心痛めての結果だろう・・・・とはアスランは思わない。 何故なら、キラは・・・・・・・・・極度のシスコンなのだ。 そう、それはこの艦にいる赤目の少年よりも重度だろう。 そんなにも大切な姉を、どこぞの馬の骨ともつかないキモ男と結婚させるなんて・・・・・キラが許すはずも無いのは明確だ。 自分だって、カガリの護衛になったからといって・・・・散々脅されたのは記憶に新しい。 「カガリに手出したら、許さないからvv」 とか、 「カガリ泣かせたら殺すよ?」 とか、 「守ってあげて・・・・?・・・怪我なんかさせたら・・・・・どうなるかわかってるよね??アスランvv」 ・・・・・なんて超絶笑顔でいうものだから余計に恐ろしい。 アスランが俯いて、キラに怯え、震えているのを・・・・一緒にいたルナマリアが、 ・・・・・そんなに代表のことが好きなんだ・・・・。 とかなんとか思っても、仕方の無いことだろう。 まあ、何だかんだでミネルバにいることになったアスラン。 キラ達のことが不安ではあるが・・・・・AAにいるならば大丈夫だろう。 恐らく、今頃呑気にお茶でもしてるに違いない。 なんせ、あそこには最凶の面々ばかりいるのだから。 そんなことに想いをはせながら・・・・コンディションレッド発令のサイレンをどこか遠くのことのように聞いているアスランだった。 |