3、狙われたものは |
そうして、あなたはどこまで行ってしまうのでしょう―。 震えるキラを、カナードは黙って抱きしめた。 クロトやオルガ、シャニはそんな二人を眺めていることしか出来なかった。 だが、それもガラスの割れる音によって終わりを告げる。 前方には、窓から入ってきた2人の男達。 咄嗟にシャニとオルガが男達の拳銃を蹴り落とす。 そして、それを奪って脇にある通路の先へと急ぐ。 「・・・・っち。もうこんな所まで来やがったのか。」 オルガが悪態をつきながら、追ってくる敵と応戦していた。 相手の武器は勿論一つでは無いので、攻撃がやむ気配は無い。 「・・・・っつ!どうすんだよ!!この仏頂面!!!!」 「この先に隠し通路がある。それを使えば、シェルター前まで行けるだろう。」 クロトの怒号にカナードが冷静に答える。 その時 「〜〜〜〜〜っ!!!!」 相手の撃った弾のひとつが、クロトの頬を掠めた。 「っあの野郎!!マジ、滅殺!!!!」 意味不明なことをクロトが叫び、キレて相手に突っ込んでいく前に、クロトの前を影が一瞬遮ったかと思うと、2人のザフト軍人は倒れていた。 その前には、自分達の最愛の―。 「・・・・ったく。雑魚のくせして、僕のお気に入りに傷つけるなんて・・・・・いい度胸してるよね?」 最凶な青年は、微笑みながら人も殺せるほどの殺気を振りまいている。 さっきまで震えていた人物と同じ人とは・・・・到底思えない。 笑ってるけど、目が笑ってない。 こんな時のキラは、マジギレしていて本当に怖い。 キラには逆らうな。怒らすな。 これは、本当に彼の傍で生きるのに必要な術だ。 4人は改めてそう思った。 「さ、行こうか。皆。」 笑うキラに4人は、コクコクと無言で必死に頷く。 そんな4人の様子が可笑しかったのか、キラは黒い笑みを引っ込めて可笑しそうに笑った。 そして5人は、隠し通路からシェルターへと向かった。 ラクスたちも無事、シェルターに来て安心してた時、キラは上からラクスを狙う男に気付いた。 「ラクスッ!!!!」 キラはラクスを庇って床へ伏せながら、手元にあった銃で相手を撃った。 その銃弾は、無理な体勢から撃ったにも関わらず、性格に相手の手にあった銃だけを貫いていた。 「ラクス、怪我は無い?」 「ええ、キラが助けてくださいましたから。」 「・・・・にしても、ラクスを撃とうとするなんて・・・・・余程僕を敵に回したいみたいだね。ザフトの皆さんは。」 「全くですわね。ですが、キラ。キラが私を庇って怪我をしたら、私・・・・。」 「ありがとう、ラクス。でも大丈夫だよ。僕があんな雑魚相手に、怪我なんてすると思う?」 「それもそうですわね。キラがあんな雑魚相手に、怪我なんてするはずありませんものね。」 「でも・・・・心配してくれて、ありがとう。嬉しいよ、ラクス。」 「・・・・キラ・・・・・。」 相手を倒した後、ラクスとキラは真っ黒い笑顔でやり取りし、いちゃいちゃとストロベリってる。 最後の所だけ見れば、なんとも甘々な恋人同士に見えるのだが・・・・。 その前の会話が・・・・っ。 その前のオーラが・・・・っ。 ・・・・恐ろしすぎて、この場にいる誰もが動けなかった。 そして、マリューとバルドフェルドは同情する。 自業自得とは言え、この最強(凶)の二人を敵に回してしまったザフト軍に。 「じゃあ、ラクスを傷つけようとした奴らとちょっと遊んでくるねvv」 こうなったキラを、止める術は無い。 キラは、フリーダムが保管されている扉の鍵を開けると、そこには史上最強と謳われた、自由の名を持つキラの愛機が佇んでいた。 そして、キラはあっという間にザフト兵を戦闘不能にしていく・・・・その命を奪わずに。 その神業的所業に、いつもの事ながら皆見惚れていた。 だが、相手は自らその命を絶った。 それにより、目の前の青年の心に傷を負わせるとも知らないで。 「・・・・キラ・・・。」 自爆し、バラバラになった機体達の中でキラは悲しそうに微笑む。 そんな彼の名前をラクスは呼んだ。 それでも、青年は静かに瞳を揺らすだけ。 「また・・・・守れなかった。」 そうやって、敵の命までも背負って・・・・彼はどこまで行かなければならないのだろう。 それを思うとラクスは悲しくて、悔しくて・・・・堪らなくなる。 二人を、朝日が照らし出す。 まるで、新たな世界がやってくるかのように、眩しく輝きながら。 まるで、自分達を送り出すかのように、優しく、光で包み込みながら。 |
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