1、ばたく時


















そして、翼は再び宇宙へと舞い上がる―。































先の大戦から二年。
壊滅状態だったオーブは、以前のように活気に溢れた国へと戻った。
二年という月日はゆっくりと、しかし確実に人々の傷を癒していったのだ。
そう、あの一人の少年も―。





























此処はオーブの辺境。
辺りは深い森に囲まれ、滅多に人は寄り付かない。
その森を抜けると一気に開放感が増す。
目の前に広がる広い海と空。
その青さは、不安さえも吹き飛ばしてしまう程に美しい。
そして、浜辺の先にある海に面した崖にその建物はあった。
その建物のテラスには、いつも一人の少年が佇んでいた。
その美しい顔に深い悲しみを浮かべながら。































「・・・・キラ。」




ピンク色の長い髪の女性―ラクス・クラインは、テラスに佇む青年に声を掛けた。
キラと呼ばれた青年は、その紫電の瞳を悲しげに揺らしながらユニウスセブンの残骸が作り出す星達を見て言う。




「また・・・・始まっちゃったね。」
「ええ。そうですわね・・・。」
「人は何で繰り返すのかな?」





争いを・・・・憎しみと悲しみの連鎖を―。





人を、憎むことは簡単だ。
その憎しみに身を任せてしまえば、楽になれる。
赦すことや、理解することの方が遥かに辛い。
許せなくて、赦せなくて・・・・・その思いに引き裂かれそうになる。
でも、それでも―。




「まだ・・・・・間に合うかな?」
「キラが、そう思うのでしたら。」





きっと、まだ間に合いますわ。




ラクスはそう言って微笑む。
その言葉は、キラの中に広がっていく。












まだ、間に合うだろうか。
この星の宇宙へと、再び羽ばたいたのなら―。













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