風華 凛様より*

















アスランが連れてきた少女は、炎のような紅い髪をしていた。
彼女と同じ、生命の色をしていた。






















まぼろしの少女






















キラは、医務室で眠る彼女を見詰めていた。
白いシーツの餓えに流れる紅い髪に、そっと触れてみる。こわごわと、指先を伸ばした。確かな髪の毛の質感は、キラを安心させる。此れは幻ではないのだと。


(フレイ)


忘れられない少女の名前を胸の中で囁く。


(どうして)


彼女は死んだ。キラの愛したフレイ・アルスターは。キラの目の前で。確かに。
キラの伸ばした指先は虚空を駆るばかりで、フレイの燃えるような髪の毛の一筋も掴むことが出来なかった。
そう、死んだ。フレイはもう此の世の何処にもいない。生きている筈もない。そんなこと、判っているのに。なのに。


(此の子、フレイに似てる)


ザフトへ行った友、アスランが連れて帰ってきた少女。アスランが全身で彼女を庇ったのだろう。満身創痍と言っても差し支えないようなアスランと違い、彼女に目立った代償はなかった。今はまだ気絶したように眠るばかりだけれど、其れもアスランと一緒にザフトから脱走した時の恐怖(仲間だった相手に襲われたとか)そういう物の影響が大きい筈だ。


きっと次期に目覚める。でも、其の時キラは彼女に何を言うのだろうか。



彼女は一体どんな色の瞳をしているのだろう。(彼女と同じ色だろうか)
彼女はどんな声でキラの名前を呼ぶのだろう。(彼女によく似た声で?)
彼女は、アスランを愛しているのだろうか?(こんな危険な旅路を共にする程に)


フレイによく似た少女に、拒絶されてしまったら、きっとキラは壊れてしまう。それこそ、フレイをあいして、あいされて、にくんで、にくまれて、くるしんで、くるしめた二年前のあの日々とは比べ物にならないほどに。己の唯一無二の存在がいないということの孤独や絶望に耐えられないと思いながらも生き永らえてきた、此の二年間の比ではない程に。
だけど、


(君と、話がしてみたい)


其れはキラを更なる地獄に突き落とすだけかも知れないけれど。
赦しも救いも、何処にも在りはしないかもしれないけれど。
やっと見付けた。彼女がキラの希望だ。此の少女こそが。
喩え其れが変わらない現実からの逃避だとしても。闘いばかりの日々が見せた一瞬の幻だとしても。
あの、気高く美しい最愛のたったひとりの女性への裏切りだとしても。
きっと、もう、止まらない。止められない。此の、欲望にも、恋にも似た感情は。


(ごめんね、フレイ)


嗚呼、だって、だって、此の子は、


(あまりにも、君に似すぎている)


少女の薄いまぶたに触れたら、長い睫が小さく震えた。近づく覚醒の瞬間に、キラの心が波立つようにざわついた。
其の瞬間は、きっと、もう、すぐに。




end

















ススギノ様へのリンク御礼品。キラメイに目覚めました。本編効果もありですが。
此れから増える予感がむんむん。メイリン可愛いなぁ。フレイとはまた違った可愛さがある気がする。

05/9月8日 風華凛



相互リンク記念小説


あわわわ・・・素敵フレキラメイ小説、ありがとうございますーーーっ!
こんな無謀なリクを受け付けてくださって、風華様本当にすみませんっ!!
家宝にします〜〜〜vv