この目で


  見たもの聞いたもの















「どっちが本当のラクス様なんだろうな〜。」
「ばぁーか、議長の方に決まってんだろ?」
「でもさ、オーブにいた方が格好良くね?何か、カリスマって感じでさ。」
「まぁ・・・確かにそうだよな。」
「だろ?」






ミネルバのクルー達の呑気な声が聞える。
ルナマリアは、通路を歩きながら思う。
話の種は先程のオーブ代表の会見に出てきた、ラクス・クラインの事だろう。
彼女が本物であると自分は知っている。
なのに、何もいえない。
今、自分が言ってどうなるというのだ。
何が出来る。何も出来ない。
苛立ちが自身を支配する。
歯痒かった。
何も知らない皆が。
知っていても、何も出来ない自分も。


せめて艦長のところにだけでも報告した方が良いだろうか?
そう思い、ブリッジへ足を運ぼうとした時だ。
その会話が聞えてきたのは。



「なあなあ、あの2人が支持する人って誰だ?」
「アスランさんじゃね?脱走したっていうし。」
「あぁ、ラクス様とは婚約者同士だし、代表とも仲良かったもんな。」
「だよな、羨ましいよ。」



その会話を聞いて、ルナマリアは思った。
それは違う、と。
彼女達が支持し、ともに歩むと言っているのはアスランではないだろう。
あの、フリーダムのパイロット。
撃ちたくない、撃たせないでと悲しみを瞳に宿す、美しく優しいあの人。
アスランさえも、その彼を追って第三勢力となったことを知ったら、皆驚くだろう。
その顔が見てみたいとも思える。













アスランは生きている。レイが、そう言っていた。
なら、メイリンも生きているだろうか?
大天使の懐で、あの紫電の瞳に見守られて、無事でいるだろうか?
そうであって欲しい。
多くは望まない。ただ、生きてて。願いは、それだけ。























こんなことをあなたに願うのは
傲慢なのかもしれないけれど、どうか