獅子と自由と歌姫と。 |
画面に映る、可愛らしいと思っていた歌姫は。 力強い眼差しを持ち、凛と佇みながら言葉を発する。 「私は、デュランダル議長を支持しておりません。 勿論、ブルーコスモスの盟主であるロード・ジブリール氏も。 私達が支持し、ともに歩む方はこの世で唯一人ですわ。」 その言葉に、世界中の誰もが驚愕せずにはいられなかった。 始まりは、オーブ代表であるカガリの会見だった。 先に起ったブルーコスモスの盟主であるロード・ジブリールを廻った、プラントのオーブへの侵攻。 それに対する、議長へのメッセージを伝えようとしたところ、横から電波がジャックされたのだ。 その画面に映るのは、大天使にいる歌姫ではない、偽りの華である<ラクス・クライン> 彼女の言葉がカガリの言葉をさえぎり、議長の思いをその口から発する。 偽りの言葉。 偽りの思い。 カガリは、思わず机を叩き、この宙の遥か向こう・・・・あの幾万の命を育む砂時計の中で、この状況にほくそえんでいるであろう、狸を睨みつける。 いらないもの、使えないもの、その意思のないものは排除される。 だが、自分達は簡単には排除なんてされてやらない。 守りたい世界がある。 守りたい人たちがいる。 人は、力や能力だけが全てではないのだから―。 そして、今しがた開けられた扉の方を見れば・・・ほら。 ともに歩む仲間が、たった一人の・・・自分がオーブの国を守る一番の理由である弟が。 カガリは二人の姿を見て、強く笑った。 大丈夫だ。 私には、皆が―キラが、いるから。 それから、キラがジャックされた電波をジャック仕返して。 相手の慌てた様子が伺えるようにと、ミーアの映る画面を消さずに小さくする。 その切り替えと、元のカガリの画面にいる人物に人々は、驚きを隠せなかった。 カガリの横に立ち、微笑んでいるのは、先ほどまで演説していた ラクス・クラインその人だったのだから。 そのラクスから、言葉が紡がれる。 自分の想い。 それを耳にした人々は疑う。 これは、本当にラクス・クラインなのか?と。 でも、ラクスはそんなことを気にしない。 本物だろうと偽者だろうと。 選ぶのは、自分自身なのだから。 「私達が支持し、ともに歩む方はこの世で唯一人。」 その言葉に驚く人々。 彼女が、平和を望む歌姫とオーブの若き獅子が選ぶのは、自分達ではないと言われて。 そして、それがたった一人の人間なんて。 信じられなかった。 信じることなんか出来なかった。 ・・・・・・・・・・信じたく、なかった。 それでも、それは真実なのだと。 彼女達の瞳の強さが、物語っていた。 |
失った光は、それはそれは輝いて美しくて それでも、自分達はそれを見ない振りして忘れてしまって もう、選ぶことさえ敵わない |