失われる物語 |
伝説の大天使の懐は、温かくて優しくて幸せに満ちている。 でも、悲しみも苦しみも此処にはあったのだと・・・・私は知った。 あの人は、キラっていうんだって。 フリーダムを降りてきた彼を見て、ミリアリアさんが言った。 優しくて、悲しい人なんだって。 その時はそんな意味全然わかんなくて、ただ単純に、笑顔が綺麗で。 ステキな人だな、って。 想っただけだった。 でも、何だろう? あの人が私を見る目。 この艦の人間が私を見る目。 微妙に違うんだけど、どっちも外部の人間に向ける不信感かなとも想ったんだけど、 見るからに違くて。 何か、悲しくて切なくて痛々しい視線。 何でなんだろう、皆私を見て悲しそうに目を細めるの。 泣いちゃった人も、居た。 何でなんだろう、とミリアリアさんに尋ねたら、 「・・・・・ちょっと、ね。古傷、っていうのかな?こういうの。 皆、きっと自分を責めてるの。後悔、してるの。 もっと、私達、どうにかできたんじゃないかって。傷つけないで済んだんじゃないか、って。」 そう、彼女は今にも泣きそうに、悲しそうに微笑んで。 この艦に来た時、まず驚いたのはその仲の良さ。 ナチュラルコーディネーター関係ない艦内では、皆笑顔で和やかで温かくて、 優しさに満ちていた。 でも。 ミネルバでは有得ないほどの和やかさと、それに至るまでどんな悲劇が彼らを苛んだのか。 それが、少しだけうかがえた瞬間だった。 それ以上、彼女に質問するのも憚れて(これ以上聞いたら泣いてしまいそうだったから) 結局、理由はわからなかった。 「・・・・・って訳なんですけど、どう想います?アスランさん。」 苦し紛れに彼に聞いてみた。 アスランさんは彼ら(特にキラさん)と仲良いし、理由も知っているんだと思ったから。 でも、そう言えばミネルバで初めて会ったときも、代表の方は自分を見て驚いていたのに、 彼は驚いていなかったと思い出す。 知らないのかな?と思ったとき、彼がゆっくり答えてくれた。 「・・・・俺も、詳しくは知らないんだ。ただ、」 「ただ?」 そこでアスランさんは言葉を一時、呑み込む。 そして、続く言葉に私は驚きを隠せなかった。 「君が、キラの・・・キラのこの世で一番大切だった人に、似ているから・・・だからだと思う。」 「私・・・が?」 「ああ、髪が・・・・良く、似ているみたいで。 あいつ、泣いてたよ。君の姿見るたびに、辛そうで・・・見ていられない位。 AAのクルー達もそうだ。彼女は・・・AAのクルーの一人だったそうだから。」 私は、2人の間に起こった出来事が気になって尋ねる。 「・・・どんなことがあったんでしょうか? その・・・このAAの人達と、私に似ているっていう、その人との間に。」 「・・・俺もね、彼女とは会ったことが無いし、少ししか話を聞いてないから。 本当、わからないんだ。でも、聞いてみるといい。クルー達に。 君だって、理由もわからずそんな風に見られるのは、嫌だろう?」 「・・・・・・はい、聞いてみます。」 「―だ、そうですよ?ラミアス艦長。」 アスランさんがそう、私の後ろ―つまりこの部屋の入り口に声をかけた。 私は驚いて、振り返ると、そこにはこの艦の艦長さんの姿。 どうしよう!と思って慌てる私を、艦長さんは落ち着いて、と宥めてくれた。 そして、私の隣に腰掛けた彼女の口から、2年前の悪夢が語られる。 そうして、長いこと語られた悲しい切ない2人の物語に、私は涙を零さずには、いられなかった。 |
それはおとぎばなしのようにせつなく、 ゆめのようにはかないふたりのきせき。 |