異常な常に


  気が狂いそうで。










「仇は討ちましたよ。」







そう、目の前の少年に言われた瞬間・・・・目の前が真っ白になった。
今まで必死になって抑えてた、理性も。
激しい、怒りも。
何もかも、この暗い感情にさらわれて。
後に残るのは、とどまることの無い憎しみだけだった。



何も知らないくせに。
知ろうとしないくせに。




アスランが思わずシンに掴み掛かろうとした、その瞬間。








パァ―ンッ!




辺りに小気味良い音が鳴り響いた。
その音は、ルナマリアがシンの頬を引っぱたいた音だった。
シンは自分が殴られたのを理解できなかったのか、しばし呆然としている。これには、流石のレイも驚いたようだ。目が驚愕に見開かれている。



「何すんだよっ!?ルッ・・・ナ・・・・・?」




しばらく経って、シンが意識を取り戻すと彼はルナマリアに文句を言う・・・・が。



ぽろぽろぽろぽろ。



彼女の瞳に涙が溢れているのに気付き、思わず語尾が弱くなる。
シンの表情に浮かぶのは困惑。
何故ルナマリアが泣いているのか解らない、と。
そんなシンを、ルナマリアは涙を零しながら嘲笑う。


「あんた、良く笑ってられるわね。」


と。
何の事だか全く解らないシンは、ただただ困惑するばかり。
周りにいるミネルバクルーも、首をひねるばかりだ。
何故なら、たった今シンはあのフリーダムを討ってきたばっかだった。
そう、あの誰も敵わなかった自由の名を冠す六枚羽根の堕天使に。
それは誉められることだ。
何より、追撃命令が出ていたのだし・・・任務遂行したことは誉められこそすれ、罵られるようなことじゃない。
そう、思って。
そんなミネルバクルーの面々にも、ルナマリアは侮蔑の眼差しを向ける。





皆、何もわかってない。
だから、喜んでられるのよ。
知らないから。
知れないから。







自分も、あの時あの人に出会わなかったら・・・・こんな残酷な行いを喜んでいたのだろうか。
自分も祝福していたのだろうか。
考えるだけで、嫌悪感がこみ上げる。


「一体何なんだ、ルナ。」


レイの理性的な声が、嫌に響いて聞こえる。
ルナは眉を顰めながら、キッとレイを睨みつける。


「それはこっちの台詞よ、レイ。あんた、この頃変だわ。レイだけじゃない。シンも、皆も!世界中がっ!!!!」



涙を流しながらも、ルナマリアは更に言い募る。
皆、知らない・と。
だから、そんな風に笑ってられるのだ・と。



「シン・・・・フリーダムのパイロット、アスランの親友って知ってた?」
「ルナマリアッ!」




ルナマリアのいきなりの発言にアスランが止めに入る。
やめてくれ。
そう言うかのように。
でも、ルナマリアはそれを承知しなかった。



「何で止めるんですか!?アスラン!
 だって、皆ひどいじゃないですか!アスランの気持ちも、あの人の気持ちもなにも知ろうとしないで、知らないでっ!!自分勝手で、嫌になるっ!
 なんで?なんであの人が討たれなきゃいけないんですか!?あんなに優しい人が、やさしすぎる人がっ!」


「ルナマリア・・・・。」









辺りにはルナマリアの悲痛な言葉が響き渡った。














なにもしらないなにもしれない
だからころせる
わたしはしった、あなたを
あなたのやさしさを