崩れていく建物の内部。まるで昔読んだ御伽噺に出てくる鯨の胃袋の中のようだな、と漠然と想った。 空からは瓦礫が後から後から降ってくる。これを止める手立てなど無い。目の前の人物の望むように世界が民衆が止まらなかったように、彼にも僕にもそんなの止める術など無いのだ。 カチリ、と銃口を目の前の彼に向ける。引き金を引けば彼は即座に終焉を迎えるだろう。それはある意味幸せなのかもしれない。 この後の狂った混乱の世を見ず、その為の苦労もしない、責任も何もなく自由に星々の宇宙を羽ばたき永遠の夢を見続けられるのだから。 終わりです、と僕が呟けば貴方は笑って言った。 世界を混乱へと導くつもりか、私を殺して。 そんな貴方の言葉を僕は鼻で笑った。 あぁ、もう煩い。この先の事なんか知らないんですよ、そんなとこまで責任もてない。僕はそんな立派な存在なんかじゃないんだから。所詮自分のことしか考えられないんです。自分の周りの大切な人たちだけで手一杯なんです。貴方だってそうでしょう?世界のため今後のため未来のためにだなんてそんなこと言ったって、無駄なんですよ。 口元に微笑を浮かべながら引き金を引く。貴方が目を閉じ、心を平穏にする猶予さえ与えずにその命を奪った。 僕の言ったことは本当だ。 だって、僕は知っている。 世界中の人を救うことなんか神様にだって出来やしない。 |
掌の上の全て |