差し出される手






















本当は、ずっと願ってた。
此処から、運命という無常な嵐の中から、自分を救い出してくれる光を―。






























「グラディス艦長!」
「貴方は行きなさい。」
「え・・・っ」


グラディスは、今までの軍人の顔ではなく、一人の女性としてキラに微笑んだ。



「この人の魂は私が連れて行く。」



彼女のその言葉に、キラは彼らの関係を知った。
でも、彼女は自分を恨むことなく、聖母のような微笑みで見守るかのような視線をキラに向けてくれている。


「ラミアス艦長に、伝えてくれる?・・・子供がいるの。男の子よ。
 ・・・・・いつか、会ってやってねって。」
「・・・わかりました。」
「それから・・・」
「?」


そこで途切れる、彼女の言葉にキラは首を傾げる。



「レイの事・・・頼むわね。あの子を、わかってあげれるのは貴方だけでしょう?
 さようなら、貴方達とはもっと違う形で逢いたかったわ。」
「・・・・・はい。じゃあ・・・」












そう言って、キラは2人の元を離れ、後ろで蹲っているレイへと近寄った。
片膝を付き、彼と目線を同じ高さにする。
そして、



「キミが、レイ君だね?」
「あ・・・・ぁぁ・・・っ」



キラは、泣いているレイを優しく抱きしめた。
赤子をあやすかのように、背中を安心させるようにぽんぽん、と叩く。



「よく、頑張ったね。もう、良いんだよ。僕も君も、生きていいんだ。明日があるから。」
「貴方、は・・・俺は・・・・」
「・・・一緒に行こう?明日へ、レイ。」
「う・・・っぁぁぁぁ・・・」








レイがキラに縋り付く。
キラは、一人ぼっちだった彼に居場所を与えるかのようにただただ抱きしめた。
君は此処にいるよ、と。
僕は此処にいるよ、と。
生きている、たった一つの命なんだってと伝えるために。












爆風から、レイを守るように出口へ急ぐ。
もうすぐ此処も炎の中へと消えてしまうだろう。
彼と彼女と、彼の示した世界と共に。
そして、僕たちは生きるんだ。
僕と皆と、この腕の中にいる彼と共に。































きみがここにいて、ぼくがここにいる
それが、なによりもうれしくてたまらない