己の中に潜む獣よ、 |
「キ・・・ラ・・・?嘘だろ。・・・キラ・・・嘘だって・・言ってくれ・・・。」 アスランは呆然とつぶやく。 嘘だ。夢だ。と、自身に言い聞かせるかのように。 何でこんなことになった? 何でキラが討たれなきゃならないんだ?? あいつは、誰よりも幸せにならなきゃいけない奴なのに・・・。 何で、自分はこんなところにいる? 何で、キラの傍にいなかった?? どれだけ、自分を責めても。 どれだけ、過去を悔やんでも。 あいつがいない。 あいつはいない。 誰よりも、何よりも大切な人―。 後に残るのは、二コルを殺された時よりも激しい憎しみと絶望。 今、シンに会ってしまったら・・・自分はこの想いを抑えられるだろうか。 憎しみの連鎖を、断ち切れるだろうか。 無理だ。 無理なんだ。 キラを、キラを殺したシンを・・・俺はきっと、責めずにはいられない。 殺せずには、いられない。 艦にシンが戻って来た。 来ないでくれ。 来ないでくれ。 この激情を止めるすべを、俺は持っていないから。 感情にまかせて、キラが最も悲しむことをしないように。 ドアの向こうに、あいつがいる。 綺麗事を言うなと、他人を罵りながら。 己が何よりも綺麗事を言っている、あいつが。 何も知らない、知ろうとしない、あの赤目の少年が。 俺は、ぐっと自分の腕を握り締める。 抑えるんだ。 抑えろ。 おとなしくしててくれ、俺の中の獣よ。 だけど。 だけど。 あぁ、願わくば・・・この意識事、全て喰い殺して。 |
きみのいないせかいなど、 いっそすべてほろぼしてしまえたら |