7、夢でさえ














望んだ笑顔は、まるで代償のようだった。


僕は彼女の笑った顔を見たことが無かった。いや、上辺での笑顔なら何度と無く見たけれど。
僕のことが怖いのに。恐れて憎んでいるのに、彼女は必死に笑ってた。その笑顔の下に残酷な狂気を潜ませながら。それに僕は気付いてて、それでも彼女のやわらかい肢体に縋りついた。
彼女を守りたくて守りたくて守りたくて、沢山殺した。それでいいと思ったんだ。奪われる前に奪え、守るために殺させないために泣かせない為に、奴らを。
自分と同じ種族だろうが親友の仲間だろうがそんなものは関係ない。何故それで責められなきゃいけない?なんでこんなにも心が痛むの?どうしてほっといてくれないのさ!
痛む胸の傷に気付かないために、彼女をあの血のように真っ赤な真紅の薔薇の胸へと逃げ込んだ。偽りでもいい、彼女の笑顔が見たくて。でも本当は―、









紅い髪に包まれた君の微笑みは。夢の中でさえ、見せてはくれなかったけれど。
最期、炎に包まれる瞬間の彼女は。
笑って、いたように想えた。


あれほど望んだ彼女の笑顔が、悲しくて悲しくてしょうがなかった。


ああ、どうか笑わないで。
いつもの怯えた君で居て。
そうしたら、そうしたら。


君を失わずに、済んだのかもしれないから。

































きみは
ぼくにほほえんじゃいけなかったんだ
そしたら、そしたら
きみをうしなわずにすんだかもしれない
きたいさせないできたいさせないで
きみがぼくをあいしているだなんて
そんなざんこくなこと