第2話:当たり前な居場所


















自分を生きる理由にする。
その一言で、どれだけ僕が救われたか・・・・あなたは知らないでしょう?





























「へぇ〜。ヒビキ先輩って、あのジュール隊なんですか。」
「うん、まあね。」




今、俺の目の前ではルナマリアとキラ・ヒビキと名乗ったジュール隊の整備士(自称)が会話を楽しんでいる。
あの後、4人は互いに自己紹介しあった。
シン達は、この年で隊長格の機体整備をしていると言うキラに驚き、キラもまたその年齢でザフトのエースパイロットだというシン達に驚いた。



― そうか・・・。あの時、彼も・・・・僕も・・・16歳だったもんね。



彼もザフトのエースパイロットだった。
若干16歳にして、連合から奪った新機体の一つ・・・・イージスのパイロット。
幼い頃に別れたっきり、2年前のあの日まで会うことがなかった。
仲がよくて、何をするのも一緒。
何かと失敗する自分をいつも助けてくれていた、大好きな幼馴染。
でも、再会したときには彼はザフトの軍人で。
自分は友人を守る為に地球軍となって・・・・。
争って、争って、争って・・・・彼の友達を、この手で殺した。
そして、殺された。僕の友達が。
銃口の前に、震えながら立ちはだかってくれた優しい友人を・・・奪われた。
大切な幼馴染。なのに、何故だろう。憎みあって殺しあって・・・。
でも、共に戦ってくれた・大切な親友。
そういえば、自分が奪った命の中には彼よりも幼い人も居たのだったっけ。



キラは、あの戦いの日々を思い出していた。
辛く、悲しい。それでも、懐かしいあの頃。
自分が、存在してはならない化け物だと知ったのも・・・あの頃。
それでも。
それでも。
生きろ・と言ってくれる人に出会ったから。
こんな自分のために生きる・って言ってくれる人に出会えたから。
だから、僕はココにいられる。ココにいたい。







―イザーク・・・・。

























「ところで、ヒビキ先輩。」
「何?ルナマリア??」



ルナマリアの呼びかけに、キラはハッと気が付く。
何かな?とルナマリアに向けてちょこん・と首をかしげる様も非常に可愛らしく



―この人、本当に年上か!!!?



と、疑いたくなるほどだ。
それはレイやシンも同じらしく、赤くなる顔を必死で止めている様子が見て取れた。
そんなキラの攻撃?に耐え、ルナマリアは問う。



「あの・・・・何で副艦長の制服なんですか?」



―整備士なんじゃ・・・・。



そう。キラの軍服の色は黒。
ザフトでは、黒い軍服は主に副艦長が着ることになっている。
なのに、目の前の麗人は整備士だと言っているにも関わらず、黒い軍服を着ている。
誰だって、不思議に思うのは当然だろう。
何か特別なわけでもあるのでは・・・・と期待する3人を、キラの一言は完膚なまでに叩きのめした。



「・・・・ああ、これ?何か、僕が紅は嫌だ。緑で良いって、イザーク達に言ったら「お前に緑は似合わん!!コレを着ろ!!!!」って渡されて・・・。」



―だからだよ。副艦長でも無いのに黒着てるのは。



そう、笑いながら返されても困る。
この場合、似合わないと言う理由だけで黒を着させたジュール隊長やディアッカ先輩を呆れれば良いのか。
それとも・・・そんな理由にもかかわらず、黒を着続けるキラを呆れれば良いのか・・・・恐らくどっちもどっちだろう。
2年前の英雄達は、どれも彼も、強者・・・・・というより変わってる。
ザフトの新人エース達にそう、認識させられたディアッカとイザーク、そしてキラだった。




















そんな感じで、4人は仲良く喋っていた。その時、シンが思い出したようにキラに尋ねる。



「あの・・・そういえば、キラさんは知ってます?」
「何を??」
「実は・・・・・・。」











シン達は、ディアッカの言っていたことを話した。
その話を聞くにつれて、キラの表情が悲しみと嬉しさを混ぜたように微笑むのに気付かぬまま。