それは、ある一言から始まった。










王さま★ぱにっく 1
















「・・・・・本当にやるの?キラくん、ラクスさん。」



苦笑しながら、AAの艦長であるマリュー・ラミアスは問う。
まあ、問わずとも答えなど分かりきっているが。
そして、目の前の二人は予想どうりの答えをくれた。



「勿論ですよ、マリューさん。」
「ええ、そうですわ。私達、もう決めましたの。だって・・・・・このまま黙っていられると思います??



キラもラクスも、それはもう真っ黒い笑みで返してくれた。
常人なら恐れながらも、魅入ってしまうその微笑みも、マリューには愛しく思える。
だって、その笑みは・・・・・大切な人を守ろうとする時しか、出ないことを知っているから。
その為の武器だと言うことも・・・・自分は知っているから。
二人の様子にさらに苦笑を深めながら、マリューは先程聞いた彼らの<計画>を許可する。
ある、一つの条件付で。



「あなた達の言い分は当然だわ。好きなだけ、暴れてきなさい。ただ・・・・」
「ただ・・・・なんです?」
「お茶の時間までには、済ませて頂戴?」



そう言っておどけた微笑みを浮かべるマリューに、キラもラクスも微笑み返す。
それを見て、マリューは大声で言う。



「皆、話は聞いたわね?・・・これからアークエンジェルは、プラントへと向います!発進用意っ!!!!」



その声に、待ってましたと言わんばかりにAAのクルー達は急いで発進準備をする。
どうやら、みんなも心の中は一つだったらしい。
嬉々として作業する仲間達を見て、キラとラクスは先程の黒い笑みとは違い、幸せそうに微笑む。
この人達が仲間で良かった・と。
なんて自分達は幸せなんだろうか・と
心優しいAAの皆に感謝しながら。



そして、AAは発進する。
ある、とんでもない計画を身のうちに秘めながら。



















***




















一方、その頃プラントでは・・・・・。



「・・・・なんで私たちまでプラントに来なきゃ行けないんですか。」
「しょうがないだろう?あの子を連れて来い・と議長が仰ったんだから・・・・。」



不満そうに呟くルナマリアに、アスランは諭すように言う。
ステラという少女が、連合のエクステンデッドだったことが判明し、プラント本国で治療を受けさせるためにココへ帰ってきた・・・・・・そんなこと、解っている。解っているが。
先日のアスランとオーブの代表の話。
本物のラクス・クラインに対する襲撃。
そして・・・・・・あの美しい人の願い。
それを聞いてしまってどうして、こうものほほんとしていられるのだろうか?
ルナマリアは、この前盗み聞きしたその時からプラント・・・・いや、デュランダル議長へ疑念を抱いていた。
確かに、アスランの言うとおり議長の仕業では無いかも知れない。
だが、実際議長は今の<ラクス・クライン>が偽者だと知っているのだ。
彼らがラクスを心配するなら、警戒するのは寧ろ当然のこと。
なのにこの皿男ときたら・・・・・・・・。
あの場で反論。しかも・・・・



あんな綺麗な人に向かって、あんなこというなんて・・・・・っ!あんな表情させるなんて・・・・・・っ!!隊長ってサイテー!!!!



少し前までアスランフリークとさえ謳われていた彼女だが、キラ・と呼ばれた青年を見たとたん、一目惚れ。(・・・・・ナイス、ルナマリア!)
ただ、顔だけじゃなかった・・・・惹かれたのは。
容姿よりも何よりも、その想いが。
その・・・・願いが。
存在そのものが綺麗で・・・守りたいと思う。



それなのに、この男はっ!!!!



100年の恋も冷めてしまう程の上司の馬鹿さ加減に、ルナマリアは本当に怒っていた。
その上、今も議長議長うるさい。
ルナマリアはそんなアスランの様子にさらに腹を立てているのだが、相手は全然これっぽっちも気付いて無い様だ。むかついて、思わず嫌味まで飛び出てしまう。



「ええ、そうですね。大好きなラクス様や議長に会えるようですし。」
「ラクスが?彼女はまだ地球にいると聞いているが・・・・。」



・・・・・・・・・・嫌味にも気付いて無い・・・・。
その上、疑問で返してきた。
天然なのか、鈍感なのか・・・はたまた大物なのか。
だが、そんなのは関係ない。
ルナマリアは疑問に、辛辣に答えた。



「・・・・知らないんですか?天下のラクス・クライン様が、わざわざ婚約者の隊長の為にライブをやってくださるそうですよ。」
「・・・・・・・・・ルナマリア、なんか言い方がきつくないか?」
「ご自分の胸に聞いてみたらどうですか?まあ、後悔しても遅いでしょうが。」



さすがのアスランも、ルナマリアの様子に気が付いたみたいだった。
そして、いつかの時と同じ言い訳をしてくる。
だが、ルナマリアはそんなアスランを見ようともせず、ライブ会場へと向かう。
後ろからは、あの時と同じ靴音。同じ言葉。
でもルナマリアが思っていることは、あの時とは全然違った。





















***






















「はぁ〜い!ザフトの勇敢な戦士の皆さ〜ん!!私はラクス・クラインですわー!!!!
 今日は私の最も愛する、婚約者のアスランのため・・・・そして、その仲間である皆さんの為にライブを開きましたのvv是非、聞いてくださいね!!!!」



舞台の上で声を発するのは、桃色の髪の少女。
隣では、ミーハーな友人達が歓声を上げている。
それを見ながら、シンはステラのことを考えていた。
自分が居なくて大丈夫だろうか?
寂しい思いをしてはいないだろうか?
暴れてないか。泣いてはいないか。
心配要素を挙げれば、キリが無く・・・・・本当なら、こんなライブなんて見る余裕・・・ない。
今すぐ、彼女の元へ駆けつけたい衝動に駆られる。
そんなシンの元へルナマリアがやってきた・・・・が。



「・・・・・・・どうしたんだよ?ルナ。」
「別に。ただムカついてるだけよ。」



同僚のあまりの機嫌の悪さに、思わず口に出してしまうがそっけなく返されてしまう。
そんなルナマリアの態度に、カチン・と来て反論しようするが、後から来たアスランに遮られた。アスランは何やら必死に弁明しようとしてるが、ルナマリアは相手にしない。
何がこんなにも彼女を怒らせているのか。
アスランに聞くが、彼も解らない・と言う。



・・・・・本当、一体どうしたんだ?



シンが疑問に思っていると、ポン・と後ろから肩に手を置かれる。
何だろうと振り向くと、そこにはある意味原因と言って良い・デュランダル議長の姿があった。