目が覚めて、一番初めに見たのは・・・・何よりも美しい紫電の瞳。

























それは闇の終わり。



















気が付けば、あたりは真っ暗で。
ここがどこなのか。
自分が何なのかさえ、解らなかった。
何でこんなとこにいるのか。
解らなくて、解りたくなくて。
どうでも良いか・と。
自分は死んだのだ・と。
他人事のように思う反面・・・・・・怖くて仕方が無い。
助けて・と、心が悲鳴をあげる。
でも・・・・そんなことさえ、他人事に思えてしまう自分は、やはり何処かおかしいのだろうか。
自分の事なのに。
自分が一番わからない―。



















声が聞こえた。
こんな暗闇の中、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
自分にも、名前を呼んでくれる人が居たのか・と。
安心感と共に、嘲笑がこぼれる。こんな自分を呼ぶなんて―。
バカだな。こんな自分・・・・呼んだって、何も無い。だって、自分達は道具の一つでしかない。そこら辺にある、兵器と同じ。いくらでも替えがきく、消耗品。
そんな自分の名前など、識別番号と変わらないというのに?
それでも、自分の名を呼ぶ声は優しくて・・・・・温かくて。
無性に、その声に縋りたくなった





































「・・・・二・・・シャニ、起きて。朝だよ。」



あの声と同じ声。
やさしい・・・・温かい人。
シャニが黙っていると、その人は心配そうにシャニの顔を覗き込む。



もしかして・・・・具合悪い?



そんな彼の人―キラに問われて、シャニは思わずキラを抱き寄せる。突然のことにキラは驚くが、シャニのいつもと違う様子になすがままにさせた。
キラは何も聞かず、抱きしめ返してくれる。
それだけで、シャニは安心した。
ここにいる。
ここにある。
大丈夫。ここは、あそこじゃない―。



アレは夢だったのだろう。
あの頃・・・・キラに救われて眠ってた日々に見てた夢。
闇しかない、あの場所。
一人なのも、暗闇も、怖くはなかったけど・・・・おかしくなりそうで。
そんな中、自分の名を呼んでくれた彼の声に・・・・・どれだけ救われたか。
今も、自分を本気で心配してくれる大切な人。




「キラ・・・・おはよう。」
「おはよう、シャニ。」




挨拶なんて、以前の自分なら考えた事もなかった。
でも、言ってくれる人がいるだけで。
大好きな人がいるだけで。
ほら、世界はこんなにも光で溢れてる。
きっとこの先、暗闇に飲み込まれる事もあるだろう。
だけど・・・・・もう大丈夫。
光が、どんなに愛しいものか・・・・知ったから。




「今日はね、ラクスが新作のお茶を取り寄せたんだよ。」



―あとで、皆で飲もうね。



笑いかけるキラに、シャニは頷く。







今日も、空は晴れてて澄んでいる。
この青空のようであれたら・・・・・なんて。
自分らしくないけど・・・そんな風に想う、日常の中の一時。






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